ヨガのヒーリング効果とは
日本では一般的に、体を動かすフィットネスとして知られているヨガ。
発祥の古代インドでは集中力を高めるための修行の一つとされていました。
現代では気軽な運動法として、運動不足や肩こり腰痛の改善目的に始める人も多くいます。
実際にヨガを始めると、疲労回復や姿勢改善など身体的な面に加えて心にも良い影響を与えることに気付きます。
ヒーリングってどういう意味?
ヒーリングとは本来「治療」や「癒す」という意味があります。
心と体の健康を回復する方法として、古くから各地で様々な方法が試されてきました。その一つがヨガ。
ヨガでは、何か自分に足りないものを「足す」のではなく本来自分がもともと持っている力を「引き出す」ことを大切にします。
ヨガを通して不要なものを手放し、元気な自分を取り戻しましょう!
ヒーリング効果のあるヨガポーズ4選
ヨガのポーズを、ヨガが伝わってきたインドの言葉であるサンスクリット語で「アーサナ」と呼びます。
アーサナの練習をすることで血行がよくなり、凝り固まった筋肉や関節が緩み、神経の働きが回復して体の不調が改善されていきます。
また、ヨガでは呼吸に合わせて体を動かすので自律神経の調子を整えることもできます。
副交感神経が優位になるとリラックス効果が高まるのでたまったストレスを解消したりネガティブな感情を軽くしたりすることができるのです。
①伸びをするように胸を開く「上向き礼拝のポーズ」
緊張すると喉がつまって息苦しくなったり、胸が締め付けられるような気がしたりしませんか?
ヨガでは、ストレスは喉や胸のあたりに留まりやすいと考えます。
空に向かって気持ちよく伸びをする「上向き礼拝のポーズ」で内側にエネルギーを取り戻しましょう!
- 足の間は閉じるか、こぶし1つ程度の幅に開いて背筋を真っ直ぐにして立つ。
- おへそを引き上げ、お腹を薄くする。
- 胸の前で合掌し、吸う息でその手を頭上へ上げていく。
- 斜め上を見上げ、胸を開いて呼吸を繰り返す。最後の吐く息で手を下ろし合掌をほどく。
※腰が反らないようお腹に力を入れ、胸を開くことを意識する。
②自分を守る「チャイルドポーズ」
体を小さく丸めた子どものポーズ。
赤ちゃんの頃のように、人は太ももとお腹が近づいた状態だと安心するといわれています。
クヨクヨと落ち込んでしまうときや元気が出ないときは、膝を抱えてゆっくりと休む時間を取りましょう。
力強いポーズの合間に挟むようにして繰り返すことで自律神経の働きを整えることにつながります。
- 正座で座り、両手を膝の向こうの床につく。
- 手を徐々に遠くに歩かせ、肘を曲げて上体を低くしていく。
※両手を枕がわりにして頭を乗せておくか、肘を伸ばしておでこを床についてもOK! - 膝の間は開いても閉じてもいいので、心地良く脱力して呼吸を繰り返す。
- 十分に体が緩んだら息を吐ききり、吸う息で床を押して起き上がる。
※頭が最後になるように背中を丸めながら上体を起こすとよい。
③逆転で気持ちを前向きにする「ピラミッドのポーズ」
アーサナは全部で下記の6種類に分かれています。
- 上体を前に倒す「前屈」
- 上体を後ろに倒す「後屈」
- 体側を伸ばす「側屈」
- 背骨をねじる「回旋」
- 頭を下げる「逆転」
- 中心を探して安定させる「バランス」
「逆転」のポーズでは、頭を心臓よりも下げることで脳や目の血行を促し、起き上がったときにスッキリとさせる効果があります。
慣れていないとクラクラすることもありますので始めはキープ時間を短めにして、徐々に長くしていく練習をしましょう。
- 足を肩幅の2倍程度広めに開く。爪先の向きを平行にする。
- 両手を腰におき、吸う息で背筋を伸ばす。
- 吐く息で背筋を一直線に保ったまま前屈する。
- 両手を床に付き、頭頂を床に向ける。
- 余裕があれば頭頂を床に下ろして数呼吸キープ。視線は一点に保つ。
- 息を吐き切ってから、吸う息で起き上がってくる。
④体も心もバランスがよくなる「半月のポーズ」
「バランス」のポーズでは、グラグラと揺れてしまうような姿勢で自身の中心や軸を探すことで安定を目指します。
体と心はつながっているため、体が安定すると集中力が高まり心も落ち着いてきます。
禅や武道など、ヨガには東洋の思想と似ているところがあるんです。
手足で支えようとせず、おへそや丹田*、骨盤底筋群に意識を向けるとピタッと止まるポイントを見つけられるかもしれません。
*丹田:おへそから指3本分下のあたり。
- 両足を揃えて立ち、お腹と骨盤底筋を締める。
- 吸う息で背筋を伸ばし、吐く息で前屈する。
- 右足の前方、やや外側に右手をつく。指先を立てた状態であまり体重は乗せすぎないように。
- 左手を腰に置き、左足を床から上げる。上半身の延長線上に来るように、やや高めにする。
- 余裕があれば左手を空の方向に上げ、視線は左手の指先を見る。
- 息を吐いてポーズをほどき前屈。吸う息で頭が最後になるよう背中を丸めて起き上がる。
ヨガの呼吸で「気」をコントロールする
ヒーリングは「誰かに治してもらう」方法ではなく、自分自身で今の状態に気付き、偏りがあればそれを元の中心に戻していく作業です。
ヨガでは生命エネルギーを「プラーナ」と呼び、プラーナの巡りをよくすることが健康につながると考えます。
こちらも東洋でいう「気」だと考えるとわかりやすいですよね。
呼吸は地球と自身のプラーナを交換すること。
自然の中で過ごしたり、友達と会話をしたりすることもよいエネルギーを取り入れる方法です。
ここからはふとしたときに家でできる、簡単な呼吸法と瞑想法をご紹介していきます。
左右差を整える「片鼻呼吸法」
私たちは普段、両方の鼻を使って呼吸をしていると思っていますよね。
でも実は、どちらかの鼻腔はむくんだ状態になっています。
片方で吸って吐き、数時間すると反対側、と交互に繰り返して呼吸をしているんです。
一定時間、意識的に両方の鼻腔を使って呼吸をするのが片鼻呼吸法です。
太陽と月の呼吸法とも呼ばれ、心身のバランスを整えるのに効果があります。
どちらかの鼻がつまって苦しいときは無理をせず、時間を置いて何度かトライしてみましょう。
- 片手の人差し指を立てて眉間に置く。親指と中指を左右それぞれの鼻に添える。
- 一度すべて息を吐き、右の鼻をふさぐ。
- 左の鼻から息を吸い、左の鼻をふさぐ。
- 右の鼻の指をゆるめ、右の鼻から吐く。
- 右の鼻から息を吸い、右の鼻をふさぐ。
- 左の鼻の指をゆるめ、左の鼻から吐く。
※3〜6を複数回繰り返す。深くて長い呼吸になるよう意識して、慣れてきたら回数を増やしていく。
思考をクリアにする瞑想法「トラータカ」
瞑想の方法にもたくさんの種類がありますが、初心者におすすめなのは「トラータカ」。
ただ一点を見つめるというシンプルなやり方で、脳を休ませ感情の波を沈める効果があります。
ついキョロキョロして視点が定まらなかったり、考え事をしてしまう場合は薄暗い部屋でロウソクを灯すのがおすすめです。
火の揺らぎはヒーリング効果が高く、気持ちを落ち着けてくれるでしょう。
- 安定した座り方で背筋を伸ばして座る。
- 一点を見つめ、穏やかな呼吸を繰り返す。
- 考え事が浮かんできたらそのことにただ気付き、また「見つめる」ことに意識を戻す。
ヒーリング効果を高めるには
自分を癒すための方法もただなんとなくやっているだけでは効果が半減してしまいます。
せっかくやるのなら、効率良く自己治癒力を高めていきたいですよね。アーサナや呼吸の練習を効率よくするにはどうしたらいいのでしょうか。
アーサナは緊張と弛緩を繰り返す
強度や難易度の高いポーズに挑戦することは、筋肉や脳の回路を刺激して回復機能を高めます。
ですがそれらを連続して行うのでは、エクササイズ要素だけが強くなるだけ。
自律神経の働きを促すヒーリング目的のヨガでは、緊張と弛緩を順番にしていくことが重要なのです。
具体的には、ご紹介したアーサナを以下の順で行ってください。
↓
チャイルドポーズ
↓
ピラミッドのポーズ
↓
チャイルドポーズ
↓
半月のポーズ
↓
仰向けでお休みをする
というように、「頑張る」と「休む」を交互に繰り返します。
チャイルドポーズに戻る度に身体が緩み、呼吸が深まってくるのを感じることができるでしょう。
呼吸や瞑想法は座り姿勢を安定させる
ヒーリング効果を高めたい場合は、安定した状態で座り続けるということが重要です。
たとえば正座に慣れていない人が長時間正座を続けると、足が痺れたり腰が痛くなったりして集中どころではなくなってしまいますよね。
どんな足の組み方でもいいので、次のポイントを守ると落ち着いて呼吸や瞑想を深めることができます。
・背筋を伸ばすこと
・仙骨*の真上に頭頂がくること
*坐骨:座ったときにお尻の下でゴリゴリと当たる左右2つの骨。
*仙骨:骨盤の後ろ側、下向き三角形の骨。
内なる声に耳を傾ける練習をする
アーサナの練習や呼吸法も大きなくくりでは瞑想法の1つ。ヒーリングに大切なのは「気付き」の練習をしていくこと。
左右差があるな、今日は呼吸が浅いな、なんだか眠いな、また気持ちがそれたな、というたくさんの思考の中で何度も何度も自分の中心に戻ってくるように練習するのが目的です。
ヨガをとおした自身の生命との対話がヒーリング効果をもたらし、心身の健康へとつながります。
人に何かを求めるのではなく、まずは本来の自分へと変えるところから始めてみましょう。