ルーシーダットンとは
ルーシーダットンという言葉を聞いたことはありますか?
タイに古くから伝わる健康法で、仏教医学やアーユルヴェーダに影響を受けています。
ルーシー=仙人、ダッ=正しい状態に戻す、トン=自分自身という意味をもち、自分自身で体を正しい状態に戻す「自己整体法」なのです。
ルーシーダットンの歴史
タイの伝統医療は仏教医学やアーユルヴェーダの影響を受けています。
ブッダの主治医であったチーワカコーマラパットを祖として崇拝したくさんのルーシー達により、マッサージや薬方とともに伝承されてきたのがルーシーダットンです。
ポーズだけでなく、それぞれの具体的な効能も一緒に伝わっており現代のタイでは実際に科学的根拠をもって裏付けが進んでいます。
インドから伝わってきたヨガと同様に、信頼のおける健康法なのですね。
ヨガ・ピラティスとの違い
タイ式ヨガともいわれることから、ルーシーダットンをヨガの一種だと考えてしまう人も少なくありません。
ルーシーダットンとヨガ、さらにはピラティスも実は似ているようで全く違うものなのです。
ここからはそれぞれの違いや特徴を見ていきましょう。
目的の違い
3つの違いとしてまず上げられるのは、それぞれの目的が違うことです。
ルーシーダットンは修行によって傷ついた体を、自分自身の力でメンテナンスするために考案されました。
体の疲れを取り除き、次の日の修行をまた全力で行えるようにするための健康法です。
ヨガは心と体をつなぐという意味をもち、ヨガのポーズや呼吸法をすること自体が修行とされます。
高度な柔軟性や筋力、バランス力を必要とするのもこのためです。
ピラティスは、負傷した兵士の筋力を落とさないため、インナーマッスルに焦点を当てた運動を開発したのが始まり。
寝たままでも体幹や手足を鍛えることのできる筋力トレーニングです。
修行やトレーニングでないルーシーダットンは運動の強度が低く誰でも取り組みやすいこと、痛みを取り除く効果が高いことが特徴なのです。
呼吸法の違い
また、この3つは運動時の呼吸の仕方にも違いがあります。
体とともに心を安定させるヨガでは腹式呼吸をすることにより副交感神経に働きかけ、リラックス効果を高めます。
ピラティスはインナーマッスルを鍛えるために、腹圧を高めた胸式呼吸を用います。お腹を締めた状態で体幹を安定させることが重要なのです。
一方、ルーシーダットンは、腹式呼吸と胸式呼吸を組み合わせた「完全呼吸法」で行います。
さらに呼吸を合間に止めることにより、疲労回復や歪みの改善へとつなげていくのです。
- 5秒かけて鼻から息を吸い込み、ゆっくりとポーズをとる
- 3秒間息を止めてポーズをキープする
- 5秒かけて口から息を吐き出し、ゆっくりとポーズをほどく
ルーシーダットンの嬉しい効果
修行で傷ついた修行者の体を癒すために考案されたルーシーダットンは痛みや不調を改善させる、いくつもの嬉しい効果が期待できます。
では実際に、ルーシーダットンをすると体にどんな変化があるのでしょうか。
血行の促進
ルーシーダットンの動きは、ゆっくりと呼吸に合わせて動くので凝り固まった筋肉の緊張をゆるめ血行を促進します。
血流がよくなると緊張性の頭痛や肩こり、腰痛の改善にも期待ができます。
さらには手足の指先など末端の冷えやむくみも解消されるので、血行を促すことはまさにいいことだらけなのです。
歪みの改善
骨盤の傾きや両脚の長さが違うといった体の歪みは筋肉の硬さによるそれぞれの長さや関節の可動域に左右・前後差が生まれることが原因です。
ルーシーダットンではまんべんなく全身の筋肉を使うことから、硬い筋肉や関節を柔らかくし使えていなかった筋肉は鍛えられる、というようにバランスのよい体へと変えていくことができます。
美しい姿勢を保つことができるようになれば、歪みの改善だけでなく予防することにもつながります。
ストレス解消や免疫力アップ
ルーシーダットンに用いる完全呼吸法は、自律神経の調整に役立ちます。交感神経が高まった状態が続くと、眠りが浅くなり疲労回復を妨げてしまいます。
反対に副交感神経の高まった状態はやる気がおきず不摂生になりがちで、どちらの状態も健康を害する原因となるのです。
ルーシーダットンの完全呼吸法にはポーズをした状態で息を止め、吐く呼吸でポーズをほどくという特徴があります。
吐く腹式呼吸が副交感神経を高め、吸う胸式呼吸が交感神経を、そして息を止めてから吐くという緊張からの解放がストレス解消に繋がりそれぞれのちょうどいいバランスを保ちます。
自律神経を整えることが、免疫力を上げて疲労回復効果を高めていくのです。
ルーシーダットンをやってみよう
ルーシーダットンには様々なポーズがあり、その数は200を超えるといわれます。
その中でも運動が苦手な方でも気軽に取り入れられる、代表的なポーズを3つご紹介します。
3つのポーズのやり方と、その期待できる効果について見ていきましょう。
「羽を広げる仙人」のポーズ
- 割座で座る。(正座を崩し、お尻の横に足を置いてお尻を床に直接下ろした座り方)
- 両手を組んで手のひらを上に返し、鼻から息を吸って上に伸びる。腕はやや後ろに引き、視線は斜め上に。
- 3秒息を止め、口から息を吐いて両手をほどき横から下ろす。
- 両手を後ろで組み、鼻から吸って手を後ろに引き胸を開く。視線は斜め上に。
- 3秒息を止め、口から吐いて両手をほどく。3セット繰り返す。
【効果】
・胸が広がり呼吸が深まる。
・腕を大きく動かせば肩甲骨が動いて、姿勢がよくなる。
・酸素をたっぷりと取り入れて、頭をスッキリさせ集中力を高める。
「英雄のポーズをとる仙人」のポーズ
- 割座で座る。(正座を崩し、お尻の横に足を置いてお尻を床に直接下ろした座り方)
- 両腕の肘を曲げ、親指と人差し指の指先をつけて輪っかを作る。
- 鼻から息を吸い、肘を体につけたまま両手を真横に開く。肩と胸を開くことを意識する。視線は斜め上に。
- 3秒息を止め、口から息を吐いて両手を元の位置に戻す。背中や肩甲骨を意識して3セット繰り返す。
【効果】
・肩甲骨を寄せて褐色脂肪細胞を刺激し、脂肪を燃焼させる。
・巻き肩や猫背を改善し、姿勢が良くなる。
「羽を休める水鳥の仙人」のポーズ
- 両足の間をこぶし1つ分程度開けて立ち、膝を軽く曲げる。
- 左手で左足の甲を持つ。左肘は真後ろに向けて曲げる。
- 右手は正面に伸ばし、手首を曲げて手のひらを正面に見せる。
- 鼻から息を吸い、右膝を曲げて重心を下げ、左かかとをお尻につける。
同時に右手を右に大きく広げ、顔は左側に向ける。息を止めて3秒キープする。 - 口から息を吐いて元に戻る。左右交互に3セット繰り返す。
【効果】
・前ももを伸ばして張りを改善し美脚を作る。
・胸を広げて姿勢を改善する。
・バランスを取ることで体幹を強化する。
いつでもどこでも、今すぐ始められるルーシーダットン
運動の強度が低く、特別な柔軟性や筋力も必要としないルーシーダットンは年齢や性別を問わず誰でも気軽に挑戦することができます。下に敷くマットさえ必要が無く、動きに場所も取らないのでどこにいてもできる気軽さが特徴です。激しい運動が苦手な人や、痛みがあって動きが制限されてしまう方でも取り組むことができます。
あなたも今日からルーシーダットンを始めて、日々の運動習慣を身につけてみましょう。